2022/03/25

インタビュー「森の自然こども園東本梅と亀岡型自然保育について」(4)自然保育で大切にしたいこと

シロバナタンポポ

1.子どもたちを真ん中にした地域の「散歩」

_自然保育で子どもたちに関わるときに今まで大事にしてきていること、これから大事にしていきたいことはありますか?

【仲田】

大人は、理論的に考えてみたり、計画性とかを考えるんだけど、そこも考えつつ、中心はやっぱり子どもたち。

私が一番大切にしている「散歩」は自然保育の原点のような気がするんです。園も、柵は一応あるけど、柵がない園みたいな感じで、気持ちの中ではずっと広がっている。そういう形だから、子どもを中心とした大きな園(地域)を散歩する感じ。その中で自然の不思議やら色んなことがわかるし、色んなことを感じることができるし、地域の方や犬とかとたまに触れ合うこともできる。

最終的には地域を知っていくことが一番いいんです。そのことによって地域の方ともつながりができて地域の活性化にもなってくるし、地域とのつながりが一番重要。
「これをしたら自然保育や!」というのは見せ方としてはありますけどね。たまには見せ方を重視しなければならないのは承知していますが、でも実際は地道な活動の中でやっていくような感じです。
小規模だからこそ、それを活かして子どもたちを主体に考えていくのが、私は一番いいのかなと思いますね。

2.心に響く体験の中で「素敵」の種をみつける

【岩﨑】

今年は遊び場の畑で有機の大根を育てていて、一緒にしてくれている農家さんに「大根に話しかけてくれたら、美味しい大根が出来るよ。」と言われたので、大根と沢山お話しているんですよ。
ある日、昼寝の前に3歳の子が「せんせい、眩しい眩しい! カーテンしめて!」と言うので「そんなにまぶしい?」と聞いたら、「って言ってる、だいこんが。」って。大根に虫よけの不織布がかぶせてあるんですが、確かに一部開けてあるところから光が煌々と照っていて。

焼き芋パーティーの日も、「あ、やきいもパーティーっていうのわすれてた! いうてへん!」と慌てているので「誰に言うん?」と聞いたら、「だいこんに!」って(笑)お祭りごっこの日も「いまから、おまつりごっこにいってくるね! いっしょにいく?」とか話かけていたり。

【岩﨑】

そういう風に子どもたちは、人だけではなくて物とか自然物とか自然現象とも、擬人的に会話をしたりイメージしたりする。散歩道の竹林で、風が吹いてゴオーッていっているのをみて、「なんてお話しているんやろねー?」と投げかけたら「ワー風がつよい! たおれるー!」っていう子と、「そんな風ではたおれませーん。」っていう子がいたりとか。

先ほど命の話も出てきたんですけど、「命は大事やで。」って話してもらうのも一つ。でも心が共鳴するものがその時に生まれているかというと、生まれていない時もある。だから自然と関わって遊ぶ中で「あ、ほんまやわ、命終わった。」とか、「あ、大変なことした。」とかいうような何かが一瞬でも生まれてくれたらいいなと。話で聞いたことと自分の体験が重なって、「命、大事やな。」というつながりになったらいいなと思います。

自分にも経験があって、私はトンボの首に紐付けて(わらしべ長者を読んだんですかね)飛ばしていたんです。葉っぱにとまったから、飛んでほしくてピッて紐を引っ張ったら……切れたんです。体と顔が切れて、そのときは心の中で「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ってなったのをよく覚えていて。その経験があるのとないのとでは違うと思うので、そういう体験をちょっとでもしてくれたら嬉しいなと思いながら、日々面白く過ごしてます。

いま、大変なことや解決すべきことが、世の中に溢れているように思えるんですけど、でもちょっと見方を変えたら、面白いこと、楽しいこと、美しいことがいっぱいあって、世界って面白いんやでっていうのも知ってほしいなって本当に思います。
ニュースを見ていても、生きづらさとか大変さばっかりにフォーカスがあたっているような気がするんですけど、いいこと、楽しいこと、生きてて「うわーっ!」て思うような経験もあるので、そんな種をもって大きくなってほしい。

【岩﨑】

もちろん大変なことがないわけではなくて、その中でも生きていかないといけないんですけど、「素敵なことあるんやんな。」と思いながら過ごして行ってほしいなと。

子どもたちの世界で友だちとけんかしたりもするけれど、ただマイナスな面だけでもなくて、その経験から人との関わり方を学んだりとか。ああいう時はこう言ってあげたら良かったのかなとか、自分はこうしたら良かったのかなとか、小さいながらの経験も、もちろんあるので、良い面にフォーカスをあてられたら。
嫌なことだったかもしれないけど、そこに意味のあるものがあったのかなということが、ちょっとでも伝わればいいなと思いますね。世の中や社会には面白いこといっぱいあるよって。

【仲田】

いっぱいあると思います。やっぱりあの年齢の時に色々な経験をしたり、自然体験とかそういうことが重要だと思いますね。過程や経験を通してやっているのが大事。

例えばこの辺は歩いているとシロバナタンポポがありますけど、白いものがあるということは、大人でも知っている人は少ないと思うんです。そういう何か一つでも得意な分野というか、実際に見て触って知っていることによって、その子たちの自信につながるような感じになったらと思いますね。

私は大人の世界でも色々な話をしますけど、大人でもそうなんですよ。話をしていると、本で知識を得たのか、経験とか体験とか実際に調べてやっているのかが、すぐわかってしまう。体験や経験を積んでおくと、自分の言葉で、何か「こうや!」という形で話せるしね。
そういうのもやっぱり大切。小さいから全部が記憶には残らないかもしれないけど、根底には宿っている。きっとその子のためになると思います。

(1)イントロダクション
(2)森の自然こども園東本梅とは
(3)自然保育について

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